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豊栄荘 山月の間 2009.01

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僕の大学の同級生が若旦那として歴史ある箱根の旅館を運営しております。
箱根駅から100円のバスで15分ぐらいのところにある旅館「豊栄荘」です。
そんな旅館がテレビに出る(12月5日放映でした。もうかなり前ですね)という連絡をいただき、懐かしくなりました。
とても古い旅館なのですが、小さな和室の部屋が続き間的につながっている落ち着きのある旅館です。自然の中でゆったりと上質なサービスを享受するにはお勧めの旅館です。
セールス致しますと・・・・・傾斜地に這うように建物が建っており、どの部屋からも景色は抜群です。また露天風呂が川沿いにあり、開放的な気分にさせてくれ僕的にはここが一番おすすめです。料理は雉子(キジ)が食べられますよ!!
建築マニアには大きな民家が移築されており、そこの空間は昔の豊かな住空間を感じさせてくれます。
そんな旅館の一部屋に面して大きな屋上がありまして、殺風景なコンクリートで出来ており、避難経路としてしか使われていませんでした。そこでその部屋を少しでもよい空間とする為に何かできないかといった相談を若旦那より5年前に頂き、ほんのちょっとした提案を同級生の黒川氏としました。
箱根の移り変わる豊かな四季を楽しんでもらう為には、屋外に少しでも気軽に出られるようにしたいと考え、細長いデッキを提案しました。コンクリート剥き出しであった床には玉砂利を敷き、コンクリート製の手摺は木で覆い隠しました。照明は福多佳子さんに協力してもらい脚元だけを照らす様な最低限の照明としています。きれいな星や月の明るさに気付いてもらう為です。
ただ、あまり予算がある訳ではないので最低限のことはプロの大工さんにやってもらい、残りの作業は従業員一同でやる事になりました。最終的な床板を貼ったり、塗装を施したり、玉砂利をホームセンターで大量に購入して床に敷き詰めたりと沢山の事を従業員が協力してやり遂げたようです。部屋が良くなり、お客さんに喜んでいただくのはもちろんですが、若旦那曰くこの工事では意外な効果があった様なのです。
「従業員が仲良くなり、愛着を持ってこの部屋への接客が出来る」
ということです。従業員が空いた時間を見つけて、共通の目標に向かって身体を動かし、作り上げるといった共同作業がそういった一体感をもたらした様なのです。とっても原始的な作業は、今後の旅館運営に意外な効果をもたらしてくれたのです。
僕が設計する仕事ではそこに住む人に一緒に作業していただく事が多々あります。子供も含め家族で自分の住む空間の一部を塗装をするだけでも家には愛着がわきます。つまり、こういった作る作業に参加する体験は、後々に家をかわいがってメンテナンスしてくれる動機付けとなるのです。家というのは車と違って出来上がったものを買って来るのではなく、作り上げるものなのです。
また、工事現場には頻繁に住む人に来てもらい、家の中がどうやって出来ているか、家をつくり上げてくれる職人さんはどんな方か?を理解してもらうように心がけています。壁の裏がどうなっているのか?を知る事は自然な事ですし、自分で改装したいと思わせるきっかけにもなります。職人さんと住む人が会話をする事で顔の見える関係ができ、決して無茶な値切りや、手抜き工事が行われないと思っています。
そんな単純な事に気がつかせてくれた豊栄荘の「山月の間」に感謝です。
そして是非、イケメン若旦那が迎える豊栄荘に脚を運んでみてくださいね。

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