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相見積りは何社まで? 2008.05

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家を建てるときに天秤にかけましたか?
建築を建てるには通常僕たち建築家は数社の工務店に相見積りを取ります。ハウスメーカーであれば設計+施工が一体なのでどうやって天秤にかけるか難しいところですが、いくつか同時平行でお話を進めていたりすると思います。
僕たち建築家が住宅であれば50枚程度の図面を工務店数社に渡すと2週間程度で同じく50枚程度の見積りが工務店から帰って来て、それを査定しつつ見積り調整をし、最終的に1社の工務店と契約をします。
この作業が建築家にとっても、クライアントにとっても避けては通れない現実の世界と直面する難関ですね。
そこで、その見積りという行為を少し考えてみたいなぁーと思います。
まず、見積りは「無料」です。そこが大切な所です。世の中「ただより高い物はない」なんて言いますがこの「見積りは無料」というのがくせ者です。中古車査定、修理品、リフォーム等何でも見積りは無料で、有料というところはないと言っても良いでしょう。しかしそういった物の共通点を考えると「どれも値段が高い」という共通点がありますよね。
まず、工務店は何をしているかをお伝えします。建築家よりもらって来た図面を各種工事別に必要箇所だけを抜き出してコピーします。工事別というのは大工さん、防水屋さん、屋根屋さん、設備屋さんといった具合に職人さんの種類ですね。通常この人達を「下請け」といったり、「協力業者」と言ったりします。住宅であればだいたい10種類から15種類ぐらいの違う業者さんが絡むのですが、その職種分を工務店コピーをし、協力業者が取りに来ます。もちろん工務店も同じ職種の協力業者と複数取引があるので、数社に出して相見積りをさせていたりしており、ここでも相見積りは発生しています。
そしてだいたい1週間程度で各協力業者さんはファックスで工務店まで見積りをあげてきます。
それを工務店の見積り担当者(大きな会社はそれ専門の人材がいます。小さな会社は現場監督が兼任します)が取りまとめ、見積り落とし(ミス)がないか、見積りがかぶっていないか、明らかに高い見積りを協力業者が出して来ていないかを確認しながら工務店のフォーマットに金額を載せて行きます。(ちなみに図面に書かれている事は見積り落しがあってもやるというのがこの業界の通例ですので、このチェックは重要です。とはいえ、僕たち設計者が大きな見積り落としに気がつけば指摘してあげますけど)
その際に、見積り担当者はいろいろと工夫をします。
・各項目の一部に工務店利益をちょっと載せておこう。(通常工務店の利益は「諸経費」という項目になっている)
・これは高すぎるから後で協力業者に言ってとりあえず勝手に20万さげちゃおう
・あの協力業者には今回見積りを出さなかったから、あっちなら多分これぐらいだろうからそれを見越して安くしておこう。
・この設計者はあとで無理難題を指示してくるから、ちょっと予備費を中にちりばめておこう
・最終的に4150万になったが、4000万にして、なんとか工事中に協力業者に協力させよう
等、実に様々な思惑を見積書に込めながら何十枚もの見積書が出来上がります。それを最後に社長に見せると
「こんなんでこの仕事が取れるかい!!あと200万下げろ!!」
なんて担当者は言われて、「実際に取れたら大変だぞ」と思いながら200万下げて見積書が綴じられ提出されます。
社長(工務店)としては当然これだけ苦労して見積りしているのに取れなければ1円にもならずに、損するので、なんとか利益取れるギリギリの線をいってでも仕事をゲットしたい訳です。
そんな様々な想いが見積書に込められ、数社からの分厚い見積り書が集まります。とはいえ、工事契約するのは1社(どの業者も高い場合はさらに違う工務店数社に出す事もある)なので、残りは「はずれ」となりこんなに動いたのに一円もいただけません。
実質工務店は紙代、コピー代などの経費の他に、人件費等がかかっており、住宅一物件であれば15万ぐらいは最低でも費用がかかっているというのが現実なのです。となるとどうするかというと、取れた仕事にその取れなかった仕事の損益をのっけるわけです。
当然、あなたも私も生きて行くためにはお金を稼がなくてはいけませんので、これが悪い訳ではなく当然の経済原理です。よって、回り回って自分が支払った工事費は知らない他人の損益がのっけられて取られているという現実があるのです。
そう考えると10社も見積りを出すのは結局は自分にその損益が帰ってくると考えていただき、僕たちは予算が3000万なら3社、4000万なら4社と1000万/1社を目安にするべきではないかとクライアントにお願いをしています。
そして、これは実現した事はない個人的な意見ですが見積りは1万でも5万でもよいので、有料にすべきではないかと思っています。もちろん工務店側は採算は取れないのですが、見積もりを出す側がお金を出すという事は大きな事だと思うのです。そうする事で2500万の予算で5社出したいというクライアントも少なくなるでしょうし、工務店も適当な見積りを出すわけにはいかなくなると思うのです。
そんなわけで、見積りをたくさんにお願いするのはやめましょう。告白を一杯の人にやるみたいな物ですので。(ちょいと違うか!)

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