太田幸夫先生最終講義! 2010.02
僕が多摩美で助手をしているときにいろいろとお世話になった太田幸夫先生の最終講義が先日多摩美でありましたので、聞きに行ってきました。
一般の方はご存じないと思うのですが、ピクトグラムの普及に全生涯をつぎ込んで(現在形!)いらっしゃる先生です。グラフィックデザインをされている方で、ピクトグラムを勉強しようとして太田先生の著書に行き当たり、その本で勉強された方は数知れずいらっしゃると思います。
ピクトグラムというのは非常口に書かれている絵とか、トイレのマークからオリンピックの種目をあらわすマークのことを指します。地球上の人が一瞬で判断できる共通の言語として簡素化した絵を用いることで、国籍、文化、教養などに関わらずコミュニケーションが図れる絵文字なのです。もうこれらは空気のように当たり前として普及していますが、その裏では太田先生の凄まじい努力があると思います。
例えば、ピクトグラムの標準化です。輸入車のインパネ(各種計量器などが集中するハンドルの廻りの操作板)周辺を見て頂くと、なんとなくこのボタンを押せばどうなるかがわかるようにスイッチ周辺に絵が書かれていると思います。その絵(ピクトグラム)の標準化(全世界統一)しないと、世界に商品として流通する事が出来ませんし、勘違いは事故を招く可能性もあるのです。それらの世界スタンダード推進に大きく寄与されたりしています。もちろん理論だけではなく、実践としていろいろなピクトグラムのデザインもされています。
ピクトグラム以外にも各種サイン(公共にあるような地図などの案内図とかからラッピングバスなどの企業広告まで)のデザインも代官山ヒルサイドテラスを始めいくつも手がけられています。
講演ではピクトグラムの歴史と太田先生自身の活動をオーバラップさせながら70歳という年齢をみじんも感じさせない熱い語り口で、二時間の講演予定を軽くオーバーして三時間話し続けてくれました。とはいえ、ごり押しで話し続ける訳ではなく、「用事がある方はどうぞご自由にご退席ください!」とか、「○○さんいらっしゃいますか?あれ、いませんね。昨日ファックスでお知らせ話しただけなので仕方ありませんね」などなど、どんどん太田先生ワールドに引き込まれていきました。
まさしく絵に書いたような教授という雰囲気があり、僕にも学生にも分け隔てなく公平にそして丁寧にまっすぐ接してくれる方でした。
講演会が終わり片付けの最中、僕は太田先生に「今後どうされるのですか?」という質問をさせていただきました。
「あくまでも大学はサイドワークですから、何も変わりませんよ!」
という返事。とってもかっこ良い!!
今やっている活動に使命を感じているようで、まだまだ現状に満足できないジレンマが太田先生突き動かしている様子がとっても素敵でした。
ますますお元気でご活躍される背中を拝見しながら、僕は少しでも後をついていけるように頑張っていかねばと思わせる最終講義でした。