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デザインって? 2009.09

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 前の記事のコメントを受けての返事のような、返事ではないようなことを書きたいと思います。

西山さんが仰るように現実の壁はとてもとても高く、それらが大きく変わる可能性(デザインという物を大切にしていくという世の中)を感じる事はありません。悲しいのですが。
「はやくてやすくてうまい」という吉野家のような商品がメディアを使ってデザイン家具やら家電、建築を声高に叫んでいますよね。資本がある会社が雑誌社に広告費を出し、記事を書いてもらい、ムーブメントを煽るわけです。
本当に良い物がそんな吉野家のようであるわけないのは誰もが知っているとは思うのですが、ついつい味の濃い牛丼に舌が麻痺してしまっている人も多いのが現状だとは思います。素材の味を活かした薄口の味付けをお金を払って味わいたい人は少ないですが、いるとは思いますし、少しずつ増えている感じはしています。その人たちに向かって、一生懸命良いと思える物を作り続ける事を確実にやるしかないと思っています。
まず、上記の例に出した料理はこの何年かで地位が向上している気がしています。衣食住の「食」にはお金を使うようになって来ていると感じるのです。ミシュランがランク付けしたり、パティシエと呼ばれる人たちが活躍し、美味しいデザートを作る店が増え、人が並んででも入る料理店は増えているのではないでしょうか?これは文化の成熟の現れなのかもしれません。(ちなみに吉野家は吉野家で役割がある訳で、大切な存在です。その産業の中で個人も大手も中堅も群雄割拠している事が健全な証拠で、大資本こそ勝ち(価値!)になっているのはちょっと歪んでいると思うのです)
しかし、まだ「住」にはその成熟は達していないと思います。かっこいい服を着て、美味しい物を食べにいく人もとんでもない家に住んでいる事は良くあります。ただ、逆はないと思うのです。それを証明するように、住宅の中で建築家がきちんと手がけた仕事は全体の5パーセント以下(正確な数字を知っている人がいたら教えてください)で、ほとんどがメーカーによる設計施工です。これが飲食のように個人経営と大手が拮抗してくれば変化の兆しがあるのでしょうが、家は「はやくてやすくてうまい」が未だにメインです。メーカーでは文系出身の営業マンが建築家ですからね。
文化の成熟が「住」に来るにはもうすこし時間がかかるのかもしれません。
だからといって僕たちは指をくわえているしかないのか?それは・・・困りました。
どうも建築家はつるむのが好きではない人が多いのが難点かもしれません。個人同士の集まりが時にはまとまり、大きな動きができるようにならなくてはいけないともいます。これはとても大切な事だと思っています。建築家やデザイナーに政治家がいないのも変だと思いますしね。
で、僕の小さな抵抗というか、やっている事があります。
僕は多摩美で学生に、また仕事でクライアントにかならずこのようにお話をします。
「何年も愛されて使い続けているデザイナーがデザインした椅子や照明などを高いけどがんばって買ってください!」
椅子や照明などショッピングセンターなどで1脚2980円で買ってしまうと、結局何十年も使う事になってしまっている事があります。そんな例をいくつも見てきました。
長く愛されている家具は価格は高いのですが、使っているうちにかならずその良さが分かってきます。それは「衣」、「食」のように一瞬で分かる物ではありません。長年使っていくうちに感じるものだと思います。また、価格が高いほど大切に、かつメンテナンスをし、愛着が自然とわいて来て大切に何年も使う事になります。(それが、エコに繋がるよね)
そんなプロダクト商品をみんなが数点持つ時代がくると信じていますし、その運動を僕は地道に進めていこうと思っています。それが徐々に住空間にも移行してくるはずだとね。
「なんで椅子が一脚、7万、8万もするねん!」
それは単純に時間をかけているからです。同じ椅子をデザインするのにも1日で図面を書く人もいると思います。また、何度も試行錯誤して試作品をいくつも作り、200日かかる人もいるのです。用途は同じ椅子ではありますが、想いや試行錯誤が価格に見えない形として載っているのです。まだまだ僕たちの身の回りにはデザインという目に見えない物(時間)にお金を払う習慣がありませんので、僕たちが知る有名デザイナーでも大手金融業の部長クラスよりも全然安い収入しかないのです。
是非、毎月5000円を貯めて、良い家具を買ってください。そうすると、ほらっ、狭くても良い空間が欲しくなって来たでしょ!!

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