本敷地は、中野区の古くからある商店街の裏手に位置し、まだ低層の古い木造家屋があって住民の息遣いを感じる路地に面する住宅の建て替え計画。
長く住み慣れた2階建て木造住宅を解体し、1階を親世帯、2・3階は子世帯を迎え入れた重層長屋です。路地幅員を4m確保するために敷地は大幅に削られ、敷地はより南北に細長くなり、北側への採光確保と構造バランスが課題となりました。そこで、1・2階は門型フレームを並べることで壁を最小限に抑えつつ壁量を確保した壁式RC造に、3階はS造として建物重量を抑え、基礎を杭なしの直接基礎としました。
長く住んでいる親世帯の1階は、今後も濃厚な近隣関係を維持できるように門型フレームで空間を仕切りながらも各部屋がそれぞれ路地に面するようなっています。さらに今後のライフスタイルや世帯の変化に合わせ、外壁の一部をブロックとして解体できるようにして将来的に賃貸住宅等に変更できる可能性を残しています。
子世帯は、南側外階段から上がり、路地に開いたテラスアクセス型メゾネットとしました。路地の立体的延長として2階テラスが気軽に立ち寄れる場になると考えたのです。住戸内は門型フレームで緩やかに各場を作りながらエントランス、リビング、キッチンまでを連続した一体的空間としました。中央には吹抜けを設け、トップライトから光を落とすことで、採光確保と共に空間の広がりや中心性を持たせています。
近くの古い商店街は他の地域と同様、小さな個人店舗が閉店してしまい、その後解体、いつの間にか中高層のマンションに建て替わることで近隣関係が失われていくというこの場の状況に、この家はまだ路地らしさを活かし住宅でありたいと考えました。