昔からある住宅地の中に、仕事場である美容院を併設した住宅。ここに住まわれるのは当面一人であり、一般的な広い家族用のLDKを作ろうとしても一人では大き過ぎる空間となり、かえって寂しい家となってしまいます。逆にワンルームアパートのように狭い空間としてしまうと家族が増える可能性を建築的に否定することなりかねません。一人でも、また家族ができても成立するような家にするひつようがありました。
そこで、4.5帖を一つの単位とした小さな部屋をたくさん集めて住宅+美容院としました。それぞれの4.5帖部屋は昔の日本家屋のように続き間となっていますが、床素材やフローリングの向き、そして天井の高さが一つ一つ変化させました。そうすることで音の反射や照度・足の感触が違うので4.5帖がゆるやかに分節されているともいえるのですが、視線は抜けるようになっています。住宅部の4.5帖は小さな空間ですが、それらが6つ集まった続き間としてみれば27帖のワンルームとなっています。美容院は待合、カット、シャンプーで天井高さを変え、雰囲気を緩やかに変化させています。
外観は2階のある部分を頂点として異なる天井高さをつないで最小限ボリュームとしました。そうすると樋がない傾いた稜線を持つ建築となっており、パースが全くきいていなかのような、逆から見ればパースがききすぎているような不思議な外観をもつ建物となっています。