奥様が車椅子使用者であるご夫婦とそのお子さんのための住宅で、将来的な二世帯住宅までを想定しています。建ぺい率・容積率・外壁後退などの制限内で最大限の面積を確保し、ボリュームの角を斜めにカットすることで、車椅子でも動きやすく、また広がりの感じられる多角形平面としました。この操作によって生じる外部空間は、それぞれ駐車場や玄関ポーチやテラスとなり、無柱で大きく張り出した三角形の軒下は濡れないで車椅子を車に搭乗させることができるスペースにしています。
1階は親のフロア、2階は子のフロアとしていますが、将来二世帯になった時にも、離れ過ぎないほどよい距離感を保てるように考えました。両世帯は共有玄関の土間を介して、多角形空間で緩やかにつながっていますが、それぞれのメインスペースは遠くなるような動線計画となっています。つまり巻貝のように、外周部に水廻り~玄関土間~階段~廊下という動線を設け、各階の奥には最もプライベートな場所をつくることで、空間的には緩やかにつながりながら、物理的には遠いといった状況をつくり出しているのです。
1階は寝室や水廻りも含めて極力すべてがつながり、動きやすくなるようにしました。車椅子やペット対策として、手摺の高さとなる腰壁を基礎を延長しコンクリートの打放しとしています。2階は当初最低限の仕切りにとどめ、将来的には放射状に様々な方向を向いた部屋をつくることを想定しています。
南東側と北西側は全面開口としてそれぞれテラスや隣接する森に対して開き、外部環境に対して近い心理状態でいられることを大事にしました。2階は中心に塔屋を設けて勾配天井にすることで、採光と換気と開放性を確保しています。
内外のバリアや両世帯のバリアといったものを極力なくし、その距離感を微妙に調節しながら、お互いが気遣い、助け合えるような家になることを期待しています。