三重県郊外で、これから夫婦になる2人のための専用住宅。それぞれの生活スタイルを確立してきた30代夫婦のため、生活を共にするにあたって要望に違いが出てきました。趣味も生活時間も温度感覚も違う二人の要望をかなえつつも互いの距離感が遠ざからないように、どこにいても気配を感じるような家にしたいと考えました。
そこで家の中の諸室を大きく「機能的で閉じこもれる狭い個室部屋」と「皆で過ごし移動する広く長い廊下部屋」に分け、それらがぐるりと「つ」の字の字形に中庭を取り囲む構成としました。中庭は別棟であるガレージによっても囲い込まれ、よりプライベートな庭となっています。
廊下部屋は細長い空間ですがひとつながりとなっており、離れていてもお互いの気配を感じることができ、中庭を介して様子が少し見えることで互いが別々のことをしていても共存できる空間を目指しています。また、家具や屏風等の可動家具を用いて個室空間の延長スペースとしても廊下部屋は機能できるように考えています。
個室部屋は両側の部屋との間に壁があり、三方を囲まれてはいますが廊下部屋に対しては全開放になっています。天井は中心である中庭に向かって斜めに高く、奥から空への視線を確保しています。部屋として閉じたい時は遮光バーティカルブラインドが仕込まれており、角度によって閉鎖率を変えることも可能です。
家族の気配を感じつつ、お互いの距離感を調節し、選択、カスタマイズしながら生活できる家になることを期待しています。