住宅密集地の中にある旗竿敷地で、さらに旗の部分が三角形に近く、上から見ると矢印形の敷地形状に建つ三角形の住宅。
敷地は旗竿らしく全て隣地建物に囲まれており、周囲建物の影の影響が大きく、直射日光を確保するのが非常に困難な状況でした。隣地建物間が唯一空いていた南東部分の隙間から採光を確保しようと考えましたが、ガラス張りにしても結局はプライバシーの為にカーテンが閉まってしまいそうです。そこで、三角形の建物ボリュームから南東部分を抜き取って外壁のみを設置し、その外壁面を白くすることでレフ板のように光を室内に導くことを考えました。導かれた貴重な光を全体に拡散する為に内部空間は2階の一部を半階ずらし、家全体が気配とともにゆるやかに繋がるようにしたのです。
また敷地形状に素直な三角形平面は、一般的な水平垂直以外に「斜め」という新しい軸が生まれ、家の中にいろいろな視点を作り出しています。
屋根形状については建築基準法の北側斜線、軒高7mを踏まえつつ、上部が吹抜けているリビングは気積を押さえ、小屋裏のロフトは気積を最大限確保できるように検討を重ねています。建築基準法の制約と内部気積により導かれた複雑な屋根形状は外観のみならず室内の天井形状にもフラット天井にはない豊さを与えてくれています。
平面の2つの軸、階のずれ、複雑な天井形状から生まれる様々な空間の関係性が、生活や家族関係をより多様なものにしてくれることを期待しています。