東日本大震災で被災し、半壊認定を受けた築100年以上経過する新築住宅。 敷地内には漢方薬局、アトリエ、倉庫などがあり、既存と同じ位置に新築建築物も建てることになりました。
クライアント夫婦は陶芸や音楽、映画鑑賞、書道など多彩な趣味を楽しんでおり、旧住宅は様々な絵や彫刻が日常的に触れられる日本家屋でした。そんな旧住戸の要素を新築にも残せるように考えました。
1・日本家屋独特の暗さ
2・絵や彫刻が置ける場所の確保
3・つるっとしたインテリアではなく凹凸や陰影のある空間
(1)薬局への通路にもなる南側は採光よりもプライバシー確保や雁木としての機能を重視し、庇を長く出し閉鎖的にしました。その代わりに北側には中庭を作り、そこに開くような構成としました。北側の安定した昼光がもたらす程良い明るさ(暗さ)を実現しています。
(2)お客様が通る南側から北側に行くに従ってプライバシー度が高くなるように諸室を配置し、南側玄関部分にはパブリックな場所として大きな引戸を持つ玄関の前室としてギャラリーを設置しています。 雪の日はここを漢方薬局の待合いとして臨時的に使用したり、陶器や絵画を日常的に見てもらうための昔の土間玄関のような場所を作ろうと考えました。
(3)2X10材を組み合わせた登り梁をリズム良く並べ屋根架構を露出させ、凹凸や素材感のあるどこか懐かしい感じがする空間を目指しました。
耐震性、高気密高断熱、全館暖房などの今の技術を使いながらも周辺環境に違和感のない建築とし、子供達・近隣の人々も自然と集まってきたくなるような場になる事を期待しています。