築30年の中古住宅を購入し、入居前に水回りを中心とした1階部分の改修。売りに出すために簡易的リフォームが行われていましたが、床の不陸がひどく、新建材(プリントシートを表面に貼ったもの)を上から被せているだけの質感のない貧しい空間でした。耐震補強・断熱改修を行うため外壁や下地を残して偽物で覆われた表面はすべて除去し、布基礎からベタ基礎にしたり、断熱材はすべて新規に交換しました。石膏ボード等で隠されていた柱や梁の断面欠損部分には埋木を施して補修し、できる範囲で現しにしました。中古住宅は中古住宅らしく表現できる様な空間を目指したのです。その他、床暖房、キッチン、浴室、トイレ等は新調し、屋外にはリビングの延長としてウッドデッキを設けました。
また、美大卒の夫婦は日常生活の中で何かを作り出したりする事がよくあり、子供達が絵を書いたりするような創造行為がこの一家の大切な日常となっていました。そこで各々が自由に違う行為が共存できるような分割できる大きなナラ無垢テーブルをシンボルとして設計しました。お母さんはミシンを、お父さんはノートパソコン、子供達は兄弟で絵を書くというように皆が常に大テーブルに集まってくる家になることを期待しています。
尚、壁・天井の珪藻土やその他の塗装工事はクライアント夫婦の自主施工です。苦労して塗った経験はきっとこの家をメンテナンスする動機付けとなり、また本物の素材はそのメンテナンスに応えて深みのある表情となり、いつしか全体が一つの調和を産む家となると思っています。