BLOG ブログ

  1. トップ
  2. ブログ
  3. 阿佐ヶ谷

阿佐ヶ谷 2006.03

一覧へ戻る

東京都杉並区にある阿佐ヶ谷という土地に1958年前川國男と日本住宅公団によって設計された分譲住宅があります。テラスハウス(庭が各住戸に着いており、長屋形式)を基本として様々なタイプの住宅が全部で350戸あり、それらが大きな敷地の中に配置されています。
行ってみて驚くのはその風景です。そこにたどり着くまでにみた町並みとは全く違い、緑多い自然の中に2階建ての住宅がぽつりぽつりと風景に隠れながら建っているのです。まるでアメリカの映画のシーンみたいな感じでして、プライベートな庭と共用部とが緩やかに繋がりながら人が住んでいました。ゆるやかに蛇行する道があり、道行く人に少しそこで営まれる生活を感じさせてくれるような温かい感じの印象を受けました。というのはテリトリーを囲い込むようないわゆる塀がないのです。一般的にはプライバシーと領土主張のために塀を設けますがそれは逆に防犯としてはよくないという意見があります。理由は塀を乗り越えたらあとは中で何をしても近所からみれないからです。そういった意味ではここは誰でも、いつでも見る、見られるの中でみんながみんなで町を守っている印象を受けるのです。
そこには時代劇で出てくる長屋みたいに隣近所を感じながら日々の生活をするというスタイルが展開されており、それを促進するような建築とその配置計画となっていました。なんだか僕たちが忘れてきた落とし物がそこにあるような感じがしたのです。
しかし、それから48年経過し建物は大変老朽化していますがまだそのまま残っています。しかし、今年中にはすべて取り壊し、6階建てのふつうのマンションが建ってしまうようです。計画案は建築家の僕が見ても何の工夫もないどこにでもあるマンションが空から降ってきたようにできてしますこととなりそうです。
その前にぜひ、興味を持った方はここにきて感じてみてください。なんだか忘れていたモノを感じさせてくれて少しだけ幸せになれると思います。この場所を体験するだけで十分価値があると思います。
昔は大金持ちがいて広い土地に木に囲まれた大きな屋敷があり、様々な町並みを構成していました。しかし相続税という制度により、土地は子供たち分と相続税用の売却用に分割されてしまいます。買った不動産はさらに分割して分譲住宅を売り、子供たちは一緒に住まず同じような家を隣同士に密集して建ててしまう。あっといまにどこにでもある均質な町並みになってしまっていっています。この場所も大手デベロッパーや大手施工会社によって均質化されてしまうのでしょうか?
このサイトに再開発計画についてもう少し詳しくかかれているので見てみてください。
老朽化のことを考えると壊すことはよいと思うのですが、もうすこしまともな再開発計画案となることを祈りつつ・・・・・

CATEGORY

YEAR