7年前に設計した「久居の住宅」の敷地内に、離れとして計画した美容室。地方都市ののどかな住宅地に位置し、既存住宅と隣地に挟まれた間口3mという限られた敷地の中での計画でした。美容室という性格上、目印となるような”特徴的”な建築をめざしつつ、一方で住宅地や既存母屋とともにつくりだす景観が周囲の建物と馴染んだ、”自然”な建築にしたいと考えました。
既存母屋、隣地建物が迫る東西短手方向は数十ミリから数百ミリ単位のシビアな関係性により外壁位置、軒高さを決定し、採光を母屋に届けるように配慮しています。一方比較的配置に余裕のある南北長手方向はおおらかな操作により平面的な溜まり、遠方からも認識できるような背の高い軒先といった建物の特徴となる鋭角部分を形成しました。
間口2mをきる内部空間は、メリハリのある天井高さと、北・東面の大きなハイサイドライトからの光によって強い空間のキャラクターをつくりだそうとしています。一方利用者に近い壁面には腰壁、カウンター、棚板といった家具スケールによって建築と利用者を親密につなぐ空間としたいと考えました。数ミリメートルというマイクロスケールから数メートルというヒューマンスケールまで多層的に計画することによって住宅地の隙間に”特徴的”と”自然”を同時に実現することができたのではないかと思っています。